7月11日 水曜日 入院34日目 術後26日目
リハビリ室で、PTが膝をぐっと曲げ、痛みに悲鳴を上げたとしても、曲がりは120度~130度だ。しかも、一旦曲げた膝を自分で伸ばそうとすると、するどい痛みが走り自分で伸ばすことさえ出来ない。
こんなんで、本当に支障なく歩けるようになるのだろうかという不安と焦燥感が襲ってくる。
そんな時にふと思う。
ケアマネの仕事を始めて順調に月日を重ねてきた自分。幸運も不運も人生には同じ数だけ存在するとすれば、今までの私があまりにも恵まれていたのだろうと・・・・・。入職してわずかな年数で会社の役員までさせてもらうほどの幸運を手にしたのだから、神様がちょっとの不幸を与えたのかもしれないと。私の鼻をへし折る為に・・・。まわりの人にどれだけ支えられているかを知らしめるために・・・・。
焦燥感の渦の中でそんなことばかりが頭をよぎる。
7月12日 木曜日 入院35日目 術後27日目
CPMはようやくMAXの130度に達した。130度までの設定しかないということは、正座が出来るまで膝を曲げようという考えは最初からない。ちなみに、正座は160度から170度まで曲げないと出来ないらしい。
医局長回診の時に、「正座が出来るようになりますか?」と問うてみた。先生は
「正座は日本だけの悪しき習慣です。膝にどれだけ悪いかわかってない。」とけんもほろろ・・・・。
でも、現実に利用者の家は畳であり、ほとんど正座をして利用者と話をしていたという現実がある。折りたたみの椅子を持ち運び、「膝が悪くて、正座が出来ないんですよ・・・・」とこれからの仕事で何百回繰り返すことになるのだろうか・・・・。
7月13日 金曜日 入院36日目 術後28日目
おめでとう!目標としていた術後4週間となった。来週からはいよいよ右足を床につけて軽い荷重からかけていく。右足を床につけたとき、私は何を思うだろう?痛みなく歩行出来るのだろうか?不安と期待が交錯する。
今日はひどい雨。熊本あたりは水害が発生しているらしい。
7月15日 日曜日 入院38日目 術後30日目
日曜だというのに、社長、専務、稲垣管理者、山下さんがひょっこり顔を見せてくれた。デイサービスの事業計画を立てるために、社長が全員集合させたらしい。御苦労さまである。
山下さんが、「早くもどってきてください。ただ座っているだけでいいですから。」と言ってくれた。今の私には一番嬉しい言葉かもしれない。職場へもどるんだという目標を持つ為に・・・
会社の面々が顔を見せてくれる時が、私のテンションが一番上がるときだと自覚する。足が思うように動かず不安な気持ちがつのっていたが、今日は一気に解消した。私が一番輝くことが出来るのはやはり、会社のみんなと触れ合い、笑いあえることだと確信出来たのは、ある意味今後の仕事への姿勢の柱になり得るだろう。
午後、旦那がきてくれて、私の髪のシャンプーをしてくれた。それを見た看護師が
「いや~。奥さんが入院されたら、ご主人に洗濯物を頼むのさえ気を使うと皆さんおっしゃいますよ。シャンプーしてくれるご主人なんて今まで見たこともありませんよ!」と驚いていた。
へへへ。いるのです。ここにちゃんと。
7月17日 火曜日 入院40日目 術後32日目
主任ケアマネ研修二日目。今日は、片田さんに送迎のお世話になった。「送り迎えは全然問題ないですよ。」と笑って言ってくれた。いい人だ。
本日の倫理やリスクマネジメントの講義は面白くて熱心に聞き入った。倫理については、私が必ず会社で伝達講習を行おうと思うくらい有意義な講義だった。
7月19日 木曜日 入院42日目 術後34日目
松葉つえで右足を三分の一だけ荷重して歩行訓練している。リハビリ室に両足をつけるとそれぞれの足にどれだけの荷重があるかスクリーンにうつる器械がある。右足は20kgのところに赤い線があり、それを超えないように注意しなければならない。。20kgなんてほんとにわずかな荷重だ。
5週間ほど歩行していなかったので、足底が痛む。歩行するとき、蹴りあげる動作に支障がある。改めて、ただ歩くという動作にどれだけの筋肉や腱やその他の組織が加わっているのかを自覚する。
美奈子さんがお見舞いにきてくれた。煙草1カートン持って。
「みんなに何が一番喜ぶかって聞いたら、みんなが、これって口をそろえるから・・・」
ハッハッハ。確かに。
7月21日 土曜日 入院44日目 術後36日目
2本の松葉つえでなんとか歩行しているが、右足の底がピリピリと痛み、なかなかスムーズな歩行が出来ない。受傷した膝ではなく、足底か?!と、思わぬ伏兵に意気消沈している。
雑誌を読んでいると、ある文章に出会った。とても成し遂げられないと思われた山ごもりの修行を成功させたあるお坊さんの言葉だ。
「人生で無駄なことは何ひとつありません。全てのことが今につながっているのです。」
本当にそうだなと感じる。ケアマネをしょうとケアワーク九州で働くようになった経緯を考えても、その通りだなと納得する。
それならば、私がこうして三カ月もの入院を経験したことは、私の人生でどんな意味を持つことになるのだろう。
つづく
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