認知症がひどく、このまま一人暮らしがいつまで出来るかなあ・・・と思案している利用者。
ヘルパーがある日訪問して驚いた。玄関のカギが交換されていたのだ。びっくりして本人に問うと、
「誰かが入ってきて泥棒していく。」と答える。ならば、新しい鍵はどこかと問えば、???
そんな報告を受け、自宅に訪問した。たしかに、玄関の古びた鍵穴が新品になっている。本人に聞く。
「鍵、新しくされたのですね。その時貰った鍵は?」
「さあ、どこにあるでしょうね。」
「鍵の交換は1万円以上するけどお金持ってなかったでしょ?どうしたんですか?」
「お金は振り込みましたよ。」
いやいや、銀行で振り込みが出来るなんてことは絶対にない。
どこの鍵屋か聞いても、首をふりばかり。電話案内で聞いたという。それならばと、私も104を電話して、
「あの、鍵を交換したいんですけど、鍵屋の電話番号をおしえてください。」
教えられた番号を回すが、その店は該当していなかった。しょうがない。なにか請求書がないか部屋中を探しに探した・・・・・そして、請求書をみ・つ・け・た!その時の嬉しかったこと。思わず河野さんとばんざいをした。午前中かかっての収穫だ。その鍵屋に問い合わせる。
「ええ、確かにうちで交換しましたよ。誰かが入ってきて物を盗っていくからと言われてですねえ。なんかおかしいなあ…とは思ったんですが、まだお金も振り込まれていません。1万5千円です。えっ?新しい鍵がなくなった?またとりかえるなら、さらに1万円かかりますね。」
全国の鍵屋さんに言いたい。認知症の主な症状に盗られ妄想があることを・・・・鍵を交換したからって、その症状が治まることは絶対にないんだから、そんな電話がかかってきたら、包括支援センターに情報提供してほしいなあ。私が担当する別の利用者もそんな症状があって、4回も鍵を取り替えている。それでも、いまだに、「泥棒が入る。」と切々と訴える。
宇野 恵子