認知症があり、全身の機能低下をしたしている利用者。現在、認知症病棟に入院中だが、そろそろ三カ月ととなり、次の行き先を考えなければならない。無理に入院をお願いした時に、相談員が、
「三か月たったら、退院ということになりますが、次の行き先はきちんと見つけてもらえますよね。」と尋ねられた時に、
「大丈夫です!」と返事した。在宅にもどってもいいし、老健でつないでもいいと思っていた。ところが、みるみるうちに状態が悪くなっていく。なんとか歩行していたのに、転倒の危険を回避するために、車いすにしばりつけた結果、歩行不可となったのだ。食事も流動食だ。嚥下機能が落ちたのだろう。
認知症の奥様。最初は入院させろ!もう、面倒みきれんと言っていたのに、最近は、寂しくて寂しくて毎日泣きながら退院させろと電話してくる。
「じいちゃんはドロドロしたものしか、食べさせてもらってない。あれじゃ、栄養がとれんやろ?じいちゃんは大根の煮つけや空揚げが好きと!家に帰ったら、どんどん食べさせてあげたい。」
ぞお~・・・・
在宅にもどろうものなら、退院したその日に、おそらく窒息死・・・・絶対に家には帰せない。
そんな中、やっと見つけた有料老人ホームの入居。生活保護でもよいと言う。ばんざ~い・・・・と思ったのもつかの間、生活保護から待ったがかかる。
「有料老人ホームに入ることは、世帯分離をしなければなりませんが、世帯分離は認められません。」だと。
世帯分離出来ないとなると、別の病院への入院か、老健だ。老健施設をいくつかあたった。いい返事がもらえない。リハビリの効果がない。在宅に最初から戻れないなら、入所対象ではないと言う。
そんな中、一つだけ、検討してみましょうという老健があった。ほっとして、確かめる。
「あの~、生活保護受給者なのですが、大丈夫ですか?」
「ああ、生活保護の方ですか?うちは、個室なので、入れないかもですね。保護課から許可が出れば別ですけど・・・」
保護課に急遽問い合わせる。返事は・・・・
「個室には入居できませんねえ。」
「じゃあ、どうするんですか?みんな保護課で待ったをかけているじゃないですか?在宅にもどって、窒息死させろと言うんですか?」
激しく突っ込むが、事態は変わらず。途方にくれている。
こんな事実があるというのに、政府は、これからは、プライバシーを重視するために、ユニット型個室を推進するとかいっている。
今必要なのは、低所得者が安心して入居できる場所だ。これこそ、政府が考えなければならないことだ。金持ちは、ほっといても豪華マンション型有料老人ホームに勝手に入るわい・・・・
宇野 恵子