ALSが段々進行している利用者宅を訪問する。起立することもかなわなくなり、両手も動かなくなった。最近は、呂律が回らなくなったと不安そうだ。すべての介護を奥様が一人で行っている。トイレ、更衣、食事、清拭・・・・いつもぴったりと寄り添って熱心に介護されている姿に頭が下がる。
ちょうど、訪問していた時に、別棟に住む、姑様がこられた。私にもにこにこと挨拶された。以前奥様から、姑様に認知症が出て、困っているという話を聞いてはいた。でも、にこにことされているので、そこまでひどくないのかなあ・・・と思ったのだが・・・
奥様がトイレ介助で室内を出て行かれた瞬間、突然怖い顔になって、
「あの嫁が私のお金を100万円、盗ってしもうたとよ!眼鏡もバッグも盗っていってね。返せ!!っていつも言うんやけど、返してくれん!ひどい嫁やろ?!私が文句いってもちっともきかんとよ。」
おおぉぉ・・・・なんたること。盗られ妄想全開のバリバリ認知症じゃないか・・・・しかも、ご主人の介護で一杯いっぱいになっている奥様が攻撃対象だ。これは、辛いだろう。
奥様が、「主人の介護はしょうがないって受け止めているんだけどねえ・・・姑の泥棒攻撃と一日探し物するのが、一番のストレスなんですよ。」と、言った言葉が甦る。
今日は、デイケア日だというのに、目の前にある医院のデイケアを選んでいるものだから、しょっちゅう抜け出して嫁攻撃に走っている様子。
私が、たまらず言った。「今日はデイケア日でしょ?帰らないとみんな待っているんじゃないですか?」
「家の中が泥棒に入られてめっちゃくちゃになっとると。片付けんといかん。」いやいや、片付けようとして、返ってちらかるパターンだよ。こんな状況を姑のケアマネージャーは知っているのか、知らんのか・・・?認知症専門のデイケアにいくべき症例だと私は思うのだが・・・
「私が姑様のケアマネもしたいぐらいですけどねえ・・・」と力なく、つぶやくしかなかった。
全介助のご主人と、盗られ妄想がひどい姑の介護・・・・このままでは、奥様がプッツンされる・・・・なんとかしなければ・・・
宇野 恵子